厚生労働省の介護ロボット補助金とは:制度の全体像と2026年の動向

厚生労働省は「介護ロボット導入支援事業」として、介護施設・事業所が介護ロボットを導入する際の費用を補助する制度を設けています。2026年現在、少子高齢化に伴う介護人材不足は深刻化しており、国は介護現場のロボット化・AI化を最重要政策の一つとして位置づけています。

介護ロボット導入支援事業(2026年概要)

補助率

1/2〜3/4

上限額

100万円/機器

申請窓口

各都道府県

対象

介護保険事業所

本制度は国が基準額を設定し、都道府県が実施主体となる仕組みです。都道府県によって補助率・上限額・申請時期が異なるため、自事業所が所在する都道府県の福祉担当部局への問い合わせが必須となります。

補助対象となる介護施設・事業所の種類

  • 特別養護老人ホーム(特養):入居者の移乗・移動・排泄介助の負担軽減が最重点
  • 老人保健施設(老健):リハビリ支援ロボット・見守りセンサーが多く活用
  • グループホーム(認知症対応型):見守り・生活支援ロボットが補助対象
  • 通所介護(デイサービス):入浴・食事支援ロボットが対象
  • 訪問介護事業所:移乗支援機器(装着型)が補助対象となるケースあり
  • 有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅:都道府県の判断によって対象に含む場合あり

介護ロボット6カテゴリの対象機器と補助上限額

厚生労働省は介護ロボットを6つのカテゴリに分類しており、それぞれに補助上限額と機器要件が定められています。カテゴリによって補助額が大きく異なるため、導入検討時に確認が必要です。

カテゴリ1:移乗支援ロボット(最大100万円/台)

対象機器例:パナソニック「ロボティックベッド」、CYBERDYNE「HAL福祉用」、富士機械製造「HUNIE」

要件:移乗動作(ベッド↔車いす等)を支援するもので、介護者の腰部負担を軽減する機能を有すること

補助上限:装着型100万円/台、非装着型(スリング型等)30万円/台

カテゴリ2:移動支援ロボット(最大30万円/台)

屋外での歩行支援や、施設内の自立移動を支援する機器が対象です。

  • 歩行アシスト装置(HAL・ウェルウォーク等)
  • 電動車いす(自律走行機能付き)
  • スマートスーツ(腰部補助ウェアラブル)

カテゴリ3:排泄支援ロボット(最大100万円/台)

排泄介助は介護者の精神的・身体的負担が最も大きい業務の一つです。自動排泄処理装置や、排泄センサー連動型機器が補助対象となります。

  • 自動排泄処理装置(ダブルエース・ヘルプパッド等)
  • 排泄予測センサー(DFree等):最大15万円/台

カテゴリ4:見守り・コミュニケーションロボット(最大30万円/台)

施設内の転倒・転落検知や、認知症入居者の徘徊防止に活用されるセンサー・AIカメラが対象です。

  • 転倒予測AIカメラシステム(ベッドセンサー含む)
  • 離床センサー連動型見守りシステム
  • コミュニケーションロボット(PALRO・pepper等):認知症ケア向け
  • インカム・スタッフコール連動型見守りシステム

カテゴリ5・6:入浴・機能訓練支援ロボット

入浴介助は介護職員の転職理由でも上位に挙がる重労働です。自動浴槽リフターや、特殊入浴装置の自動化機能が補助対象となります。また、機能訓練(リハビリ)支援分野では、AIを活用した訓練計画立案システムや装着型訓練機器が対象です。

  • 自動浴槽リフター(安楽な入浴を支援する機械浴)
  • 介護リハビリロボット(EXOSKELETON型)
  • AI訓練計画立案・評価システム

都道府県独自の上乗せ補助:国制度との組み合わせで自己負担を最小化

厚労省の補助金に加えて、多くの都道府県・市区町村が独自の上乗せ補助を実施しています。国の補助率は1/2が基本ですが、都道府県上乗せを組み合わせることで実質的な補助率が3/4以上になるケースもあります。

重要:都道府県補助は予算に限りがあるため、年度当初に予算が枯渇することがあります。早期申請が採択の鍵です。

都道府県上乗せ補助の実例(2025年度実績)

都道府県国補助率都道府県上乗せ実質補助率問合せ先
東京都1/21/43/4東京都福祉局
大阪府1/21/43/4大阪府福祉部
愛知県1/21/62/3愛知県健康福祉部
北海道1/21/43/4北海道保健福祉部
福岡県1/21/43/4福岡県福祉労働部

厚労省介護ロボット補助金の申請手順:準備から交付決定まで

介護ロボット補助金の申請は都道府県が窓口となります。国の予算配分後に都道府県が公募を開始するため、スケジュールは都道府県ごとに異なります。一般的な申請フローは以下の通りです。

申請ステップ(概要)

  1. 都道府県の公募開始を確認:都道府県福祉担当部局のウェブサイトや、介護事業所向けメーリングリストで公募情報を確認
  2. 導入機器の選定:厚労省の「介護ロボットポータルサイト」に掲載されている機器リストから選定
  3. 見積書・カタログの取得:販売メーカーまたは代理店から見積書・仕様書・認定書類を入手
  4. 申請書類の作成:導入計画書・効果測定計画書・法人の登記・直近決算書類を準備
  5. 都道府県へ提出:電子申請または郵送。期限厳守(通常1〜2ヶ月の公募期間)
  6. 審査・採択:書類審査のみ。採択結果は提出後2〜3ヶ月で通知
  7. 機器購入・効果測定:交付決定後に機器を発注。導入3〜6ヶ月後に効果測定レポートを提出

申請に必要な主な書類一覧

  • 補助金交付申請書(都道府県所定様式)
  • 介護ロボット導入計画書(導入目的・期待効果を記載)
  • 効果測定計画書(測定指標・測定時期・方法を記載)
  • 購入見積書(複数社見積が望ましい)
  • 機器のカタログ・仕様書
  • 法人の登記事項証明書(3ヶ月以内のもの)
  • 直近の介護保険事業所の指定通知書の写し
  • 直近2期分の財務諸表(決算書)

採択率を上げるためのコツ:介護ロボット補助金の審査ポイント

介護ロボット補助金の審査では、単に「機器を買いたい」だけでなく、「介護現場の課題解決にどう貢献するか」を具体的に示すことが重要です。以下の点を申請書類に丁寧に記載することで採択率が向上します。

ポイント1:定量的な効果測定計画の記載

好例:移乗支援ロボット導入の効果測定計画

  • 現状:移乗介助に1回あたり2名×5分 → 月間1,200回の介助で2,000時間/月
  • 導入後:1名×3分に削減 → 月間600時間削減(30%削減)
  • 測定方法:タイムスタディ法(導入前後各1ヶ月間の記録)
  • 腰痛発生件数の変化(労働安全衛生記録から集計)

ポイント2:人材不足・離職率との関連を明記

採択審査員が重視するのは「介護人材不足問題の解決への貢献度」です。自施設の職員離職率・有効求人倍率・夜勤者数等の現状数値を示した上で、ロボット導入後の改善見込みを記載してください。

ポイント3:試用・デモ実績を記載すると有利

メーカーの無料デモを事前に実施し、「スタッフ○名でデモを体験し、○割が「業務に使いたい」と回答」などの事前検討実績を記載すると、審査での評価が高まります。多くのメーカーが無料デモに対応しています。

介護ロボット補助金と他制度の組み合わせ戦略

介護ロボット導入費用をさらに圧縮するために、厚労省補助金と他の制度を組み合わせる戦略が有効です。

IT導入補助金との組み合わせ

介護記録AIや、センサーデータ管理クラウドシステム等のソフトウェアはIT導入補助金(最大450万円)が適用可能です。ハード機器は厚労省補助金、ソフトウェアはIT導入補助金と役割分担することで、実質的な自己負担を大幅に削減できます。

組み合わせ例:移乗支援ロボット(厚労省補助:75万円補助)+見守りAIシステム(IT導入補助金:150万円補助)= 合計225万円の補助獲得

中小企業経営強化税制との併用

介護法人(医療法人・社会福祉法人含む)が介護ロボットを購入した場合、中小企業経営強化税制による即時償却または10%税額控除も活用可能です。補助金受給後の残額(自己負担分)についても節税効果が得られます。

介護ロボット補助金の採択事例:施設規模別の活用例

実際に厚労省の介護ロボット補助金を活用した施設の事例を紹介します。

事例1:定員50名の特養(地方中規模施設)

導入機器:移乗支援ロボット×3台、離床センサー×30台

総導入費用:約480万円

補助金受給額:国1/2+都道府県1/4 = 3/4補助 → 約360万円

自己負担:約120万円

効果:夜間介護スタッフ2名体制 → 1名体制に変更可能。年間人件費約300万円削減

事例2:定員120名の老人保健施設(都市部大規模施設)

導入機器:装着型移乗支援ロボット×10台、AI見守りシステム×全室、排泄予測センサー×60台

総導入費用:約2,200万円

補助金受給額:複数年度に分けて申請 → 累計約1,200万円

効果:職員腰痛発生率50%減、離職率18% → 11%に改善