協働ロボット(Cobot)と産業用ロボットの根本的な違い

「協働ロボット(Cobot:Collaborative Robot)」と「産業用ロボット」は、同じロボットでも設計思想・用途・必要な安全対策が根本的に異なります。補助金申請においても、この区分が申請先の選択に影響します。

比較項目協働ロボット(Cobot)産業用ロボット
設計思想人間と共存・協調作業人間から隔離して高速・高精度作業
安全柵原則不要(ISO/TS 15066準拠時)必須(労安法第150条の4)
動作速度低速(最大1m/s程度)高速(最大3〜10m/s)
可搬重量3〜35kg5〜1,000kg以上
設置・変更容易(キャスター移動可)床面固定、変更困難
ティーチングハンドガイド・直感操作専門知識が必要
価格帯200〜600万円/台300〜3,000万円/台以上

協働ロボットの国際的な定義(ISO/TS 15066)

ISO/TS 15066では協働ロボットシステムを「産業用ロボットシステムであって、その設計された作業スペース内で人間と直接的に協調するもの」と定義しています。4つの協働作業形態が規定されており、安全柵なしで運用できる条件が詳細に定められています。

  • 安全監視停止:人間がエリアに入ると停止
  • 手動誘導:作業者が直接動かして教示
  • 速度・分離モニタリング(SSM):人間との距離に応じて速度を自動制御
  • 動力・力の制限(PFL):接触時の力を人体安全基準以下に制限

安全柵の要否と労安法の規定:正しく理解して設備コストを最適化

多くの中小企業が誤解しているのが「協働ロボットは安全柵が不要」という点です。正確には「適切なリスクアセスメントを実施し、ISO/TS 15066の要求事項を満たした場合に安全柵なしでの運用が認められる」です。

よくある誤解に注意

「Cobotと書いてあるから安全柵不要」は誤りです。Cobotであっても、高速・高負荷動作をさせる場合や、リスクアセスメントで危険と判定された場合は安全柵が必要です。必ずリスクアセスメントの結果に基づいて判断してください。

状況安全柵の要否
産業用ロボット(通常動作時)必須(労安法第150条の4)
産業用ロボット(教示・点検時)一時的な停止・低速条件下で柵内への入場可
協働ロボット(ISO/TS 15066準拠・PFL動作)リスクアセスメント結果次第で不要も可
協働ロボット(高速・高負荷動作)要リスクアセスメント・場合によって必要

安全柵の設置コストと協働ロボット導入でのコスト削減

産業用ロボット向け安全柵の設置コストは導入規模によって異なります。

  • 小型安全柵(シングルアーム周囲):30〜80万円
  • 中型セル(2〜3台囲い):100〜300万円
  • 大型ライン(5台以上):500万円〜

協働ロボットを選択することで安全柵コストを削減できる一方、協働ロボット本体は産業用ロボットと同等またはやや高価な場合があります。総コスト(TCO)で比較することが重要です。

主要メーカー比較:UR・FANUC・安川・川崎・ABBのロボット選定

2026年現在、日本市場で主流の協働ロボット・産業用ロボットメーカーを比較します。補助金申請では「省力化投資補助金カタログ」への登録有無も重要な選定基準です。

協働ロボット主要メーカー

メーカー主力機種可搬重量特徴省力化補助カタログ
Universal Robots(デンマーク)UR5e/UR10e/UR205〜20kg世界シェアNo.1、エコシステム充実登録あり
FANUC(日本)CRXシリーズ5〜25kg国産・サポート手厚い登録あり
安川電機(日本)MOTOMAN-HCシリーズ10〜20kg高可搬・高精度登録あり
川崎重工(日本)duAroシリーズ2〜6kg双腕型、省スペース登録あり
ABB(スイス)GoFaシリーズ5〜22kg安全性能高い一部登録

産業用ロボット主要メーカー

メーカー主な用途特徴
FANUC(日本)溶接・組み立て・塗装世界最高の信頼性・稼働率
安川電機(日本)溶接・ハンドリング溶接専用機が充実
川崎重工(日本)スポット溶接・塗装・ハンドリング自動車産業での実績豊富
デンソーウェーブ(日本)小型精密組み立て電子部品・精密機器向け
ABB(スイス)溶接・塗装・ハンドリングソフトウェア・AI連携に強み
KUKA(ドイツ/中国)自動車・重工業高可搬・汎用性高い

コスト総比較:協働ロボット vs 産業用ロボットのTCO(総所有コスト)

ロボット選択は初期費用だけでなく、5〜10年間の総所有コスト(TCO)で判断することが重要です。

費用項目協働ロボット産業用ロボット
本体費用200〜600万円300〜3,000万円
安全柵・周辺設備0〜100万円100〜500万円
導入・ティーチング50〜200万円200〜800万円
年間保守費10〜30万円/年30〜100万円/年
ライン変更対応低(自社対応可)高(SIer依頼が多い)
5年間TCO目安400〜1,000万円1,000〜5,000万円

協働ロボット導入ROIの計算例

UR10e(可搬10kg、価格400万円)を製造ラインの部品搬送に導入した場合のROI試算:

  • 作業員代替:1名分(月給30万円 × 12ヶ月 = 年360万円)
  • 導入総費用:本体400万円+導入費100万円=500万円
  • 補助金(ものづくり補助金1/2):250万円
  • 実質負担:250万円
  • 回収期間:250万円 ÷ 30万円/月 ≒ 8.3ヶ月

補助金を活用することで回収期間が通常の半分以下になります。

補助金申請の違い:協働ロボット vs 産業用ロボットで申請先が変わるか

協働ロボット・産業用ロボットの区別は、補助金の申請先選択にほとんど影響しません。重要なのはロボットの種類よりも「投資規模」「事業の目的」です。

投資規模別の最適補助金マップ

省力化投資補助金(カタログ型) 最大 1,500万円

対象:カタログ登録ロボット(協働ロボット多数登録)。補助率1/2(小規模2/3)。審査なし・先着順。最速2〜4週間で交付決定。URシリーズ・FANUCのCRXシリーズ等が登録済み。

ものづくり補助金(省力化・DX枠) 最大 1,250万円

対象:カタログ未登録のロボット・大規模設備も申請可。補助率1/2〜2/3。事業計画書の審査あり。協働・産業用ロボット問わず申請可能。

IT導入補助金 最大 450万円

ロボット本体は対象外。ロボット制御ソフトウェア・MES連携システム・遠隔監視システムの費用を申請可能。ロボット導入と同時のシステム投資に有効。

どちらを選ぶべきか:ユースケース別の選定フロー

協働ロボットと産業用ロボットの選択は、以下の判断フローで進めてください。

  • 作業速度が最重要か → 産業用ロボット(高速・高精度)
  • 人間との共存作業が必要か → 協働ロボット
  • 設置場所・作業内容を頻繁に変えるか → 協働ロボット
  • 可搬重量が35kg超か → 産業用ロボット
  • 導入・運用のしやすさを優先するか → 協働ロボット
  • コスト最小化(安全柵費用含む総費用) → ケースバイケースで試算必要

選定の迷いは専門家に相談

ロボット選定は初期費用だけでなく、補助金の申請可否・安全対策コスト・保守体制も含めた総合判断が必要です。当サイトの無料専門家相談で、最適な機種選定から補助金申請まで一括サポートが可能です。

協働ロボットの限界と産業用ロボットが必要な場面

協働ロボットは万能ではありません。以下のような用途では産業用ロボットが適しています。

  • 高速・高スループット要求:自動車ボディ溶接、プレス機へのワーク供給等
  • 重量物ハンドリング:35kg超のワーク、パレタイジング(100kg超)
  • 高精度繰り返し作業:±0.01mm以下の精度要求
  • 危険環境での作業:高温・粉塵・溶接ヒューム環境
  • 高温塗装・溶接:スパッタ・熱が人体に危険な環境

逆に協働ロボットが産業用ロボットより優れる場面は、多品種少量生産・セル生産・人間と分業する組み立て・フレキシブルラインです。