ロボット補助金の申請フロー全体像:3フェーズで理解する

ロボット・フィジカルAI導入の補助金申請は、大きく「事前準備」「申請・審査」「採択後の実施・報告」の3フェーズに分かれます。最初から最後まで完了するまで通常6〜18ヶ月かかるため、早めの準備と計画が重要です。

フェーズ主な作業期間目安
Phase 1: 事前準備GビズID取得・導入計画策定・SIer選定・見積取得1〜2ヶ月
Phase 2: 申請・審査申請書作成・提出・審査待ち・採択通知2〜4ヶ月
Phase 3: 実施・報告交付申請・調達・設置・実績報告・補助金入金4〜12ヶ月

採択前の発注・着手は絶対NG

補助金の「交付決定通知」が届く前にロボットを発注・工事着手した場合、その費用は補助対象外になります。採択通知(採択≠交付決定)と交付決定の違いも重要です。必ず「交付決定通知書」を確認してから発注してください。

Phase 1:事前準備(申請前に必ず完了すること)

事前準備を怠ると申請書の作成に支障が出たり、申請締め切りに間に合わない事態になります。申請公募が始まる最低1〜2ヶ月前から準備を開始してください。

Step 1:GビズIDプライムの取得(必須・2〜4週間)

ものづくり補助金・省力化投資補助金ともに、申請には「GビズIDプライム」が必須です。取得には2〜4週間かかるため、最優先で手続きを開始してください。

  1. gBizID公式サイト(gbiz-id.go.jp)でアカウント申請
  2. 必要書類:印鑑証明書(法人)または身元確認書類(個人)
  3. 書類提出→審査(1〜2週間)→プライムアカウント発行
  4. 多要素認証設定(スマートフォンアプリ必須)

GビズIDグロスとプライムの違い

「GビズIDグロス」は書類提出なしで即日取得できますが、ものづくり補助金・省力化投資補助金の申請には「プライム」が必要です。メールと書類提出で取得するプライムを最初から取得してください。

Step 2:導入計画の策定とSIerからの見積取得

補助金申請書の核心となる「何をロボット化するか」「どれだけの効果があるか」を具体化します。

  • 現状分析:ロボット化対象工程の作業時間・人件費・生産量を記録
  • 目標設定:導入後の省力化時間・コスト削減額・生産性向上率を試算
  • SIer選定:3社以上から相見積もりを取得(補助金申請書に使用)
  • 見積書の形式:補助金用の見積書(補助対象経費が明確に分かれているもの)を依頼

Step 3:その他の事前準備チェックリスト

  • 決算書3期分の用意(直近2〜3期の財務状況の確認)
  • 法人登記事項証明書の取得(3ヶ月以内のもの)
  • 賃金台帳・雇用保険被保険者数の確認(従業員数・賃金要件の確認)
  • 経営革新計画・先端設備等導入計画の認定(加点要件、事前に自治体に相談)
  • みらいにつながる取り組み(賃上げ計画・環境対応等、補助率加点の確認)

Phase 2:申請書の作成と提出

補助金申請書の作成は最も時間がかかる作業です。事業計画書の質が採択率を直接左右するため、余裕を持って2〜4週間を確保してください。

ものづくり補助金の申請書構成(全6書類)

書類名内容作成難度
事業計画書(本文)補助事業の内容・効果・差別化・市場性高(最重要)
経費明細・資金計画書補助対象経費の内訳・資金調達計画
加点申請書類賃上げ計画、経営革新計画等(該当する場合)低〜中
決算書(直近2期)財務状況の確認低(既存書類)
見積書SIerからの補助対象経費の見積低(SIer発行)
その他確認書類従業員数・賃金等の確認書類

申請・審査のタイムライン

  1. 公募開始:経済産業省・中小企業庁が公募要領を公開(補助金ポータルで確認)
  2. 申請書作成:公募開始〜締め切りまで(通常1〜2ヶ月)
  3. GビズIDでオンライン申請:締め切り厳守(延長なし)
  4. 一次審査(書類審査):申請から約1〜2ヶ月
  5. 採択結果発表:申請締め切りから2〜3ヶ月後

採択 ≠ 補助金受給開始

採択通知を受け取っても、その後に「交付申請」の手続きが必要です。交付決定通知が届くまで発注を行わないでください。採択から交付決定まで通常1〜2ヶ月かかります。

Phase 3:採択後の手続き(交付申請〜補助金入金まで)

採択後の手続きは複数のステップがあり、各ステップで期限・提出書類が定められています。採択後の対応を怠ると採択取消しになる場合もあります。

採択後6ステップの詳細

  1. 交付申請(採択通知から30〜60日以内)

    採択された計画に基づき、正式な補助金交付を申請します。変更がある場合はこのタイミングで修正。提出書類:交付申請書・変更事項(あれば)

  2. 交付決定通知の受取

    事務局から「交付決定通知書」が届いたら、ロボットの正式発注が可能になります。この通知書の受取日より前の経費は補助対象外。

  3. ロボット発注・導入実施

    SIerへの正式発注 → 設計・製作 → 設置・試運転 → 検収。補助事業期間内(通常12〜18ヶ月)に完了すること。

  4. 実績報告書の提出(補助事業完了後30日以内)

    補助事業の実施内容・経費の証拠書類を提出します。提出書類:実績報告書・領収書・成果報告書(省力化効果のデータ)

  5. 確定検査・額の確定

    事務局が実績報告書を審査し、補助金額を確定します。現地確認調査が行われる場合があります。

  6. 補助金入金(精算払い)

    額の確定後に補助金が入金されます。通常は後払い(精算払い)のため、それまでの費用は自社で立替が必要です。

補助金受給後の報告義務(3〜5年間)

多くの補助金では、受給後も毎年「事業化状況報告」の提出が義務付けられています。

  • 報告期間:補助事業完了から3〜5年間(補助金種別による)
  • 報告内容:売上・利益・雇用者数・賃金水準・省力化効果の数値
  • 報告義務違反:報告を怠ると補助金の返還を求められる場合があります
  • 目標未達の場合:ものづくり補助金では目標未達で補助金の一部返還が発生する場合があります

省力化投資補助金(カタログ型)の申請フロー:最短2週間で交付決定

省力化投資補助金のカタログ型は、ものづくり補助金とは大きく異なる「審査なし・先着順」の簡便な申請フローです。

カタログ型の申請フロー(簡易版)

  1. カタログ登録製品の確認:省力化投資補助金ポータルでカタログを検索し、希望のロボット機種が登録されているか確認
  2. 登録販売店への問い合わせ:カタログ登録の販売店から見積書を取得
  3. GビズIDでオンライン申請:必要事項・見積書を添付して申請(先着順のため早めに)
  4. 交付決定通知(最短2〜4週間):審査なし・先着順のため迅速に決定
  5. 発注・設置:交付決定後に発注・設置
  6. 実績報告・補助金入金:設置完了・領収書等を提出、補助金が後払いで入金
省力化投資補助金(カタログ型) 最大 1,500万円

補助率:中小企業1/2・小規模事業者2/3。審査なし・先着順。交付決定まで最短2〜4週間。賃上げ要件(従業員への賃金引上げ計画)が必要。

立替資金の確保:補助金入金まで数ヶ月かかる資金問題への対処

補助金は原則として後払い(精算払い)です。ロボット設置・支払いから補助金入金まで4〜8ヶ月かかることが多く、その間の資金を自社で立替える必要があります。

立替資金の調達方法

  • 日本政策金融公庫の補助金対応融資:「補助金採択」を条件とした低金利融資。採択通知書を持参して申し込み
  • 信用保証協会付き融資:都道府県の信用保証協会が保証する融資。中小企業でも調達しやすい
  • 補助金前払い(一部補助金):ものづくり補助金の「概算払い」制度を活用(補助金の一部を先受けできる)
  • SIerとの支払い条件交渉:設置完了・検収後に全額支払いとする条件交渉。補助金入金後の支払いを認めるSIerもあります

不採択になる主な理由:事前に押さえるべき審査落ちのパターン

ものづくり補助金の採択率は平均40〜50%程度です。不採択の主な理由を理解することで採択率を高めることができます。

  • 省力化効果が数値で示されていない:「省力化できます」では不十分。「月○時間削減・年○万円コスト削減」を計算式で示すこと
  • 事業計画と補助事業の関連性が不明確:なぜこのロボットが必要か、自社の事業戦略との結びつきを明示
  • 競合との差別化が書かれていない:ロボット導入によって競合他社との競争力がどう向上するかを説明
  • 経費の妥当性が不明確:なぜこの金額・この機種なのかを説明(相見積もり結果・機種選定理由)
  • 実現可能性に疑問がある記載:過度に楽観的な計画・根拠のない数値は審査委員に見透かされます