この記事の結論
溶接ロボットは、自動車・建設機械・鉄骨・板金など製造業の溶接工程を自動化するロボットです。2026年9月16日時点で使える国の補助金は、中小企業省力化投資補助金のカタログ注文型・一般型と、ものづくり補助金(製品・サービス高付加価値化枠)の3ルートに整理できます。
溶接ロボット補助金2026:結論と制度の全体像
溶接ロボットは、自動車・建設機械・鉄骨・板金など製造業の溶接工程を自動化するロボットです。2026年9月16日時点で使える国の補助金は、中小企業省力化投資補助金のカタログ注文型・一般型と、ものづくり補助金(製品・サービス高付加価値化枠)の3ルートに整理できます。
この記事でわかること(要約)
- 溶接ロボット 補助金:使えるのは国(経済産業省・中小企業庁)が所管する3制度。自治体独自の制度は本記事では扱いません
- カタログに実際に登録されているか:公式の製品検索ポータルを2026年9月16日に実際に検索したところ、「アーク溶接ロボット」カテゴリに3件(パナソニックコネクト2件・ダイヘン1件)が登録されていました。安川電機・FANUCの製品は確認できませんでした(詳細は次章)
- 溶接方式による違い:アーク溶接ロボットは産業用ロボット限定(協働ロボットは対象外)、レーザー溶接・TIG溶接には別カテゴリがあり、協働型も含まれます。汎用の「スポット溶接ロボット」というカタログカテゴリは存在しません
- 価格:カタログの製品詳細ページに価格の記載はありません。価格・機種比較は決定版記事にまとめています(後述)
本記事は制度そのものとカタログの登録状況を公式サイト・公募要領・公式の製品検索ポータルの一次情報だけで整理したものです。溶接ロボットの価格・機種比較を知りたい方は溶接ロボット比較ガイド、申請の詳しい進め方を知りたい方は溶接ロボット補助金の申請ガイドをご覧ください。
本記事の制度名・補助率・補助上限額・登録件数はすべて2026年9月16日時点で公式サイト・公募要領・公式ポータルで確認したものです。制度・登録製品は随時更新されるため、申請前に必ず各公式サイトで最新情報をご確認ください。
溶接ロボットの種類:アーク・レーザー・TIG・協働型の仕様の違い(価格ではなく方式で選ぶ)
「溶接ロボット」と一括りにされがちですが、省力化投資補助金のカタログ上は溶接方式・ロボット区分(産業用/協働)ごとに別のカテゴリとして扱われています。ここでは価格を抜きに、公式の製品カテゴリ定義に基づく仕様の違いを整理します。
カタログ上の製品カテゴリ定義(公式の説明文をもとに整理)
- アーク溶接ロボット:「アーク溶接作業を溶接技能者に代わり自動で行うロボット」。垂直多関節式(6〜7軸)の産業用ロボット(必要により外部軸ポジショナーを追加)と溶接機(内蔵式含む)、付帯機器(ワイヤ送給装置・溶接トーチ等)で構成され、協働ロボットは対象外と明記されています
- ファイバーレーザ溶接ロボットシステム:金属加工品に産業用ロボットまたは協働ロボットを用いてファイバーレーザ溶接を自動で行うシステム。協働ロボット、発振器(溶接トーチ含む)、制御装置等で構成されます
- 精密板金向けTIG溶接協働ロボットシステム:精密板金の加工品を溶接定盤に設置し、ダイレクトティーチング(作業者が直接ロボットに動作を教示する方式)を特徴とする協働ロボットを用いてTIG溶接未経験者でも運用できるようにしたシステム
出典:中小企業省力化投資補助金 製品カテゴリ一覧CSVデータ(2026年9月16日確認、各カテゴリの「製品カテゴリの概要」欄)。
つまり、同じ「溶接ロボット」でも、アーク溶接は産業用ロボット限定、レーザー溶接は産業用・協働どちらも対象、TIG溶接は協働ロボット限定のカテゴリがある、という違いがカタログ上に存在します。協働ロボットでの導入を希望する場合、アーク溶接を選ぶとカタログ注文型は使えず(一般型の検討が必要)、レーザー溶接やTIG溶接であれば協働型のカタログカテゴリが使える可能性がある、という点は導入方式を検討するうえで重要です。
「スポット溶接ロボット」という汎用カタログカテゴリは存在しない
自動車ボディの組立などで使われる汎用のスポット溶接ロボット(アームで溶接ガンを保持し多関節動作でスポット溶接を行うタイプ)は、2026年9月16日時点でカタログ注文型の製品カテゴリ一覧に見当たりませんでした。カタログにあるのは「テーブル式スポット溶接機」(ワークを固定してガンを移動させる設備固定型の機械)と、自動車整備業向けの「自動車向け溶接機(スポット溶接機)」(鈑金修理用)の2つで、いずれも量産ライン向けの汎用スポット溶接ロボットとは対象・用途が異なります。汎用スポット溶接ロボットを導入する場合は、カタログ注文型ではなく一般型・ものづくり補助金が候補になります(後述)。
省力化投資補助金のカタログ注文型:「アーク溶接ロボット」は実際に何件登録されているか
中小企業庁・中小機構が公開している製品カテゴリ一覧のCSVデータには、製品カテゴリ「アーク溶接ロボット」が掲載されており、カテゴリコードは「CT0119」・分類No.は「3-9-2」、対象業種は製造業、対象業務領域は加工・生産です。公式サイトのニュース欄によると、このカテゴリは2025年10月16日に「デジタルアーク溶接機」「ファイバーレーザ溶接機」など他の溶接関連カテゴリとあわせて追加承認されました。
カテゴリが承認されていても、メーカーが個別に製品登録をしなければカタログには載りません。そこで本記事の制作にあたり、公式の製品検索ポータル(portal.shoryokuka.smrj.go.jp)で実際にカテゴリ「アーク溶接ロボット」を検索しました。
2026年9月16日時点の検索結果:対象製品3件
公式ポータルの検索結果画面には「対象製品3件」と表示され、登録されている製品は次のとおりでした。
| 省力化製品番号 | 製品名 | 製品型番 | 製造事業者 |
| PD-00001890 | アーク溶接ロボット Active TAWERS4 | TM-1400WG4(高機能モデル) | パナソニックコネクト株式会社 |
| PD-00001914 | アーク溶接ロボット TAWERS4 | TM-1400WG4(標準モデル) | パナソニックコネクト株式会社 |
| PD-00002353 | Almega Friendly series II FD-B6+WB-M352L | FD-B6-0805+WB-M352L | 株式会社ダイヘン |
パナソニックコネクト2件・ダイヘン1件の計3件・2社。検索結果および対象業種「製造業」・対象業務プロセス「加工・生産」の絞り込みも公式ポータルの表示に基づきます。
安川電機・FANUC・川崎重工など、溶接ロボットで知られる他の国内主要メーカーの製品は、2026年9月16日時点の「アーク溶接ロボット」カテゴリ検索結果には含まれていませんでした(他のカテゴリに別の製品を登録している可能性はありますが、本記事では確認していません)。カタログから選ぶ製品が決まれば、販売事業者と共同でカタログ注文型に申請できます。導入を検討する際は、まず公式の製品検索ポータルで自社の用途に合う型番があるかを確認してください。
カタログの製品詳細ページに価格は載っているか
登録されている3製品のうち2件(PD-00001890「Active TAWERS4」、PD-00002353「Almega Friendly series II」)の製品詳細ページを確認したところ、製品概要・製品の明細(構成部品)・寸法・消費エネルギー(定格入力・駆動容量)・オプションの有無(外部軸ポジショナー、オフラインティーチングソフト等)・その他スペック(可搬重量、動作領域、溶接電源使用率等)・省力化効果・問い合わせ先は掲載されていましたが、いずれも価格の記載はありませんでした。
価格は製造事業者への個別確認が必要
製品詳細ページには「販売事業者検索」ボタンがあり、そこから販売事業者に価格を問い合わせる導線になっています。本記事では価格を扱いません。価格の公開状況・機種ごとの比較は、決定版記事の溶接ロボット比較ガイドで解説していますので、そちらをご覧ください。
出典:中小企業省力化投資補助金 公式製品検索ポータル「省力化製品詳細」PD-00001890・PD-00002353(2026年9月16日確認)。掲載内容はメーカーが任意に登録するもので、製品によって記載の有無は異なります。
「アーク溶接ロボット」以外にも、溶接ロボットに関連するカテゴリが公式ポータルに存在し、2026年9月16日時点で次のとおり製品が登録されていました。
| カテゴリ名(カテゴリコード・分類No.) | 登録製品数 | 登録メーカー |
| ファイバーレーザ溶接ロボットシステム(CT0108・3-9-1) | 8件 | 株式会社アマダ(6件)、株式会社アルファTKG(2件) |
| 精密板金向けTIG溶接協働ロボットシステム(CT0112・3-1-13) | 2件 | 株式会社ファブエース(2件、製品名「TIG溶接支援協働ロボットシステム」) |
精密板金向けTIG溶接協働ロボットシステムはカテゴリ名のとおり協働ロボット限定で、ダイレクトティーチングが特徴です。溶接方式や協働・産業用の区分によって使えるカテゴリが変わるため、希望する仕様が「アーク溶接ロボット」に無い場合は、これらの関連カテゴリも確認するとよいでしょう。
出典:中小企業省力化投資補助金 公式製品検索ポータル「省力化製品検索」カテゴリ:ファイバーレーザ溶接ロボットシステム/精密板金向けTIG溶接協働ロボットシステム(いずれも2026年9月16日確認)。
カタログ注文型の補助率・補助上限額(2026年3月19日改定後)
カタログ注文型の補助率・補助上限額は、応募・交付申請時点の従業員数で決まります。2026年3月19日の制度改定により、従業員20人以下の補助上限額が引き上げられました。
| 従業員数 | 補助上限額(通常) | 補助上限額(賃上げ目標達成時) | 補助率 |
| 5名以下 | 500万円 | 750万円 | 1/2以下 |
| 6〜20名 | 750万円 | 1,000万円 | 1/2以下 |
| 21名以上 | 1,000万円 | 1,500万円 | 1/2以下 |
賃上げ目標:事業場内最低賃金を3.0%(物価安定の目標2%+1.0%)以上、給与支給総額を6%以上、それぞれ増加させる事業計画を策定し取り組むことが条件です(2026年3月19日以降の申請)。補助対象経費の総額に補助率を乗じた額が補助上限額を上回る場合は、上限額の範囲内で交付されます。出典:中小企業庁「カタログ注文型とは」(2026年9月16日確認)。
補助対象経費と対象外になる経費(治具・ティーチング費用の位置づけ)
カタログ注文型の補助対象経費は「製品本体価格」と「導入経費」の2区分です。
| 区分 | 対象になるもの | 対象外になるもの(代表例) |
| 製品本体価格 | 補助事業のために使用する機械装置・工具器具・専用ソフトウェア/情報システムの購入経費 | 中古品、対外的に無償で提供されているもの、交付決定前に購入した省力化製品、消費税 |
| 導入経費 | 省力化製品の設置作業・運搬費・動作確認の費用、マスタ設定等の導入設定費用 | 交付決定前に発生した費用、委託・外注費、移動交通費・宿泊費、補助金申請・報告に係る申請代行費 |
溶接ロボットの導入では、被溶接物(ワーク)を固定する治具の設計・製作や、ロボットの動作プログラムを作成するティーチングを外部のSIerに依頼するケースが少なくありません。公式ページでは導入経費の対象外に「委託・外注費」が明記されているため、これらの費用がカタログ注文型の補助対象経費として認められるかどうかは、見積書の計上のしかたによって扱いが変わる可能性があります。事前に事務局へ経費区分を確認することをおすすめします。出典:中小企業庁「カタログ注文型とは」補助対象経費の項(2026年9月16日確認)。
一般型:カタログにない仕様の溶接システムを導入する場合
カタログ注文型の対象はメーカーが個別に登録した製品に限られます。スポット溶接ロボットのように該当カテゴリが無い場合や、安全柵・治具・ポジショナー・排気設備などを含めて現場ごとに個別設計する溶接システム一式を導入する場合は、中小企業省力化投資補助金の「一般型」が選択肢になります。
中小企業庁の公式ページでは、一般型の補助対象を「個別現場の設備や事業内容に合わせた設備導入・システム構築」と説明し、対象設備を次のように定義しています。
一般型が対象とする「専用設備」の公式定義
「ICTやIoT、AI、ロボット、センサー等を活用し、単一もしくは複数の生産工程を自動化するために、外部のシステムインテグレータ(SIer)との連携などを通じて、事業者の個々の業務に応じて専用で設計された機械装置やシステム(ロボットシステム等)」
出典:中小企業庁「応募申請・交付申請の流れ(一般型)」STEP2(2026年9月16日確認)
SIerと組んで溶接ロボットシステム一式(本体・溶接電源・ポジショナー・安全柵・制御盤等を含む)を設計する場合は、一般型が想定する典型的な導入パターンの一つです。SIer選びのチェックポイントはロボットSIer選定ガイドで解説しています。
一般型の補助率・補助上限額・対象経費
一般型の補助上限額は従業員規模が大きくなるほど段階的に上がり、カタログ注文型より高額な設備投資に対応できる設計になっています。
| 従業員数 | 補助上限額(通常) | 補助上限額(大幅な賃上げ特例) | 補助率 |
| 5人以下 | 750万円 | 1,000万円 | 中小企業1/2(賃上げ特例2/3) 小規模企業者・小規模事業者・再生事業者2/3 |
| 6〜20人 | 1,500万円 | 2,000万円 |
| 21〜50人 | 3,000万円 | 4,000万円 |
| 51〜100人 | 5,000万円 | 6,500万円 |
| 101人以上 | 8,000万円 | 1億円 |
基本要件は①労働生産性の年平均成長率+4.0%以上、②1人当たり給与支給総額の年平均成長率+3.5%以上、③事業所内最低賃金が事業実施都道府県の最低賃金+30円以上、④次世代育成支援対策推進法の一般事業主行動計画の公表(従業員21名以上の場合)です。出典:中小企業庁「一般型とは」(2026年9月16日確認)。
一般型のスケジュールと採択率の実績
一般型は年3〜4回のペースで公募されています。2026年9月16日時点で公表されている直近の公募スケジュールは次のとおりです(第8回は2026年10月16日で締切済み。次の第9回は12月上旬受付開始・12月下旬締切の予定・2026年10月22日確認)。
| 公募回 | 公募開始日 | 申請受付開始日 | 公募締切日 | 採択発表日 |
| 第7回 | 2026年6月5日 | 2026年7月1日 | 2026年7月31日17:00 | 2026年11月中旬(予定) |
| 第8回 | 2026年8月18日 | 2026年9月18日10:00 | 2026年10月16日17:00 | 2027年2月上旬(予定) |
過去6回の申請数・採択数は次のとおり公表されています。採択率(右列)は公式公表の申請数・採択数から本記事で計算したものです。
| 公募回 | 申請数 | 採択数 | 採択率(算出値) |
| 第1回 | 1,809 | 1,240 | 約68.6% |
| 第2回 | 1,160 | 707 | 約61.0% |
| 第3回 | 2,775 | 1,854 | 約66.8% |
| 第4回 | 2,100 | 1,456 | 約69.3% |
| 第5回 | 2,035 | 1,251 | 約61.5% |
| 第6回 | 1,841 | 1,176 | 約63.9% |
出典:中小企業庁「スケジュール(一般型)」「採択結果(一般型)」(いずれも2026年9月16日確認)。
ものづくり補助金:新製品・新サービス開発を伴う溶接ライン刷新の場合
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(通称ものづくり補助金)の「製品・サービス高付加価値化枠」でも、溶接ロボットを含む設備投資を対象にできます。ただし省力化投資補助金との決定的な違いとして、「革新的な新製品・新サービス開発」を伴うことが必須要件です。
「単なる置き換え」目的の導入は対象外という公式回答
第23次公募要領概要版には「単に機械装置等を導入するだけで新製品・新サービスの開発を伴わないものは補助対象外です」と明記されています。既存の手溶接工程を溶接ロボットに置き換えるだけの計画では対象外になり得ます。既存工程の省力化のみが目的であれば、中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型・一般型)の対象になり得るかを先に確認することをおすすめします。
補助率・補助上限額・対象経費
製品・サービス高付加価値化枠の補助上限額・補助率は次のとおりです(23次締切分の公募要領概要版に基づく)。
| 従業員数 | 補助上限額 | 補助率 |
| 1〜5人 | 750万円 | 中小企業1/2 小規模企業・小規模事業者及び再生事業者2/3 |
| 6〜20人 | 1,000万円 |
| 21〜50人 | 1,500万円 |
| 51人以上 | 2,500万円 |
大幅な賃上げに取り組む事業者は補助上限額を100万〜1,000万円上乗せ、最低賃金の引き上げに取り組む事業者は補助率を2/3に引き上げる特例があります。機械装置・システム構築費以外の経費区分は、原則として総額500万円(税抜)が上限です。
出典:ものづくり補助金事務局「第23次公募要領概要版」(掲載日2026年2月9日・2026年9月16日確認)。
基本要件とスケジュール(23次締切分)
採択後に取り組む基本要件は次の4点です(未達成の場合、要件①②は補助金返還義務が発生します)。
| 基本要件 | 基準値 |
| ①付加価値額の増加 | 年平均成長率(CAGR)+3.0%以上 |
| ②従業員1人あたり給与支給総額の増加 | 年平均成長率(CAGR)+3.5%以上 |
| ③事業所内最低賃金水準 | 事業実施都道府県の最低賃金+30円以上 |
| ④従業員の仕事・子育て両立支援 | 一般事業主行動計画の策定・公表(従業員21名以上の場合のみ) |
23次締切分のスケジュールは、公募開始2026年2月6日、申請開始2026年4月3日17:00、申請締切2026年5月8日17:00でした。ものづくり補助金は23次締切で公募を終了し、2026年に新事業進出補助金と統合されました。後継の新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回は2026年10月30日18:00締切です(2026年10月22日確認)。
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金「公募要領について」「第23次公募要領概要版」(いずれも2026年9月16日確認)。
溶接ロボット 導入 補助金:3制度の使い分け
3制度を公式情報だけで比較すると、次のような整理になります。
| 制度 | 対象になりやすいケース | 審査方式 | 補助率の目安 |
| 省力化投資補助金(カタログ注文型) | カタログに登録済みのアーク溶接ロボット(3件・2社確認)、レーザー溶接ロボットシステム(8件)、TIG溶接協働ロボットシステム(2件)などから選んで導入する | 販売事業者との共同申請・審査あり | 1/2以下 |
| 省力化投資補助金(一般型) | スポット溶接ロボットなどカタログにない仕様、またはSIerと個別設計するシステム一式(新製品開発は不要) | 公募・審査あり(相見積もり必須) | 中小企業1/2〜2/3、小規模2/3 |
| ものづくり補助金(製品・サービス高付加価値化枠) | 溶接ロボット導入とあわせて新製品・新サービス開発を行う | 公募・審査あり | 中小企業1/2、小規模2/3 |
最初のステップは、公式の製品検索ポータルで自社が検討している溶接方式(アーク・レーザー・TIG等)とロボット区分(産業用・協働)に合うカテゴリ・型番があるかを確認することです。合う製品があればカタログ注文型が最も手続きが簡便です。ない場合(スポット溶接ロボット等)や、治具・安全柵を含めた個別設計が必要な場合は一般型を検討します。既存工程の自動化にとどまらず新製品・新サービスの開発を伴う投資であれば、ものづくり補助金も選択肢に入ります。3制度は同一の設備投資に対して重複して交付を受けることはできません。
溶接ロボット選定で確認すべき仕様項目(価格を抜きに)
補助金の対象になるかどうかとは別に、溶接ロボットは仕様が現場の溶接対象・工程と合っているかで効果が大きく変わります。価格の話を抜きにして、カタログの製品詳細ページで実際に確認できた項目を中心に整理します。
検討すべき仕様項目
- 溶接方式と母材の適合:アーク溶接(軟鋼・ステンレス等)、TIG溶接(ステンレス・アルミ等の精密板金)、レーザー溶接(薄板・高速精密溶接)のうち、自社の母材・板厚・継手形状に合う方式かを確認します
- ロボット区分(産業用/協働):アーク溶接ロボットは産業用限定、TIG溶接協働ロボットシステムは協働限定など、カテゴリごとに区分が決まっています。安全柵の要否にも関わるため、希望する区分がカタログのどのカテゴリに該当するかを先に確認します
- マニピュレーター動作領域・可搬重量:確認した製品詳細ページには「最大到達距離1,437mm」「手首可搬質量6kg」のように具体的な数値が記載されている製品があります。ワークのサイズ・重量に対応できるかを確認します
- 溶接電源の性能:定格入力(例:19.0KVA/17.0KW)や溶接電源使用率(例:350A・10分周期で80%)など、連続稼働時の性能を確認します
- 外部軸ポジショナーの追加可否:ワークを回転・傾斜させて溶接姿勢を安定させる外部軸ポジショナー(1軸・2軸タイプ等)をオプションで組み合わせられるかを確認します
- オフラインティーチングソフトの有無:PC上でプログラム作成・シミュレーションができるソフトウェアがオプション登録されている製品があります。品種切替の多い現場では段取り時間の短縮に関わります
- 保守サポート地域・問い合わせ窓口:製品詳細ページには保守・サポート地域や担当部署の連絡先が明記されています。導入後の保守体制を事前に確認します
これらの項目は製品ごとにカタログの製品詳細ページ、またはメーカー・SIerへの問い合わせで確認できます。具体的な機種の仕様比較・価格帯は溶接ロボット比較ガイドで扱っています。
安全・資格:アーク溶接の特別教育と産業用ロボットの規制
溶接ロボットの導入では、ロボット自体の安全規制に加えて、溶接作業そのものに関する特別教育の要否も確認が必要です。労働安全衛生法第59条第3項は「事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない」と定めています。
アーク溶接等特別教育(労働安全衛生規則第36条第3号)
労働安全衛生規則第36条は特別教育を必要とする業務を列挙しており、第3号には「アーク溶接機を用いて行う金属の溶接、溶断等(以下「アーク溶接等」という。)の業務」が挙げられています。アーク溶接機を用いて金属の溶接・溶断等を行う業務に労働者をつかせる場合、事業者はこの業務に関する特別教育(いわゆる「アーク溶接等特別教育」)を行う義務があります。
出典:労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第59条第3項、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第36条第3号・e-Gov法令検索(いずれも2026年9月16日確認)。
溶接ロボットを導入しても、段取り時の手直し溶接や治具の調整、非定型部分の手溶接などでアーク溶接機を用いて労働者自身が金属の溶接・溶断等を行う場面が残る場合は、その作業者にアーク溶接等特別教育が必要です。一方、ロボットの教示(ティーチング)や検査等の業務に従事する場合は、これとは別に労働安全衛生規則第36条第31号・第32号が定める産業用ロボットの特別教育が必要になります。どちらの特別教育が必要かは「行う業務」によって変わるため、自社の作業分担(誰がロボットを教示・検査するか、誰が手溶接を行うか)を整理したうえで確認してください。産業用ロボットの安全柵義務(同規則第150条の4)や協働ロボットとの区分についてはロボット安全基準・補助金ガイド、SIer選定時の安全確認ポイントは協働ロボットSIer比較ガイドで詳しく解説しています。
申請の流れと「交付決定前の発注は対象外」という共通ルール
3制度に共通する最重要ルール:交付決定前の発注・購入は補助対象外
カタログ注文型では「交付決定前に購入した省力化製品」「交付決定前に発生した費用」が公式に補助対象外と明記されています。一般型・ものづくり補助金でも、交付決定を受ける前に発注・契約・支払いを行った経費は補助対象になりません。溶接ロボットの導入スケジュールを組む際は、必ず交付決定通知を受け取ってからメーカー・販売事業者・SIerへの発注を行ってください。申請書類の準備・事業計画のポイントはロボット補助金の事業計画書ガイド、申請全体の流れはロボット補助金の申請フロー完全ガイドでも解説しています。
カタログ注文型の申請ステップ
- STEP1 GビズID取得:電子申請にはGビズIDプライムアカウントが必要(取得に時間がかかるため早めに準備)
- STEP2 カタログから製品選定:公式の製品検索ポータルからアーク溶接ロボット等を選ぶ
- STEP3 販売事業者の選定:製品ごとに記載された「販売事業者一覧」(製品検索ポータルの製品詳細ページでは「販売事業者検索」ボタン)から選定し連絡
- STEP4 販売事業者と共同申請:中小企業側は販売事業者からの招待を受けて専用フォームから申請
- STEP5 補助事業実施:交付決定日から原則12か月以内に実施
- STEP6 実績報告:支払いに係る証憑・導入実績に係る証憑・事業計画の達成状況を提出
- STEP7 補助金交付:実績報告の内容を踏まえて補助額確定後、請求により交付
- STEP8 事業実施効果報告:補助事業完了後3年間、毎年度の稼働状況・効果を報告
出典:中小企業庁「申請・手続きの流れ(カタログ注文型)」(2026年9月16日確認)。
一般型・ものづくり補助金の申請ステップ
- STEP1 GビズID取得
- STEP2 事業計画書の作成/機械装置・システム等の選定:SIer等と連携して導入する溶接システムを検討
- STEP3 応募申請:一般型は採択発表まで約3か月程度が目安
- STEP4 相見積もり/事業者選定:採択後の交付申請にあたり、原則2者以上から同一条件による見積もりを取得する必要があります
- STEP5 交付申請:事務局が経費の妥当性を精査し、交付決定(減額・全額対象外になる場合あり)
- STEP6 補助事業実施
- STEP7 実績報告
- STEP8 補助金交付
- STEP9 事業実施効果報告:一般型は事業計画期間の1年目終了後から5年間、毎年報告
出典:中小企業庁「応募申請・交付申請の流れ(一般型)」(2026年9月16日確認)。ものづくり補助金も、応募申請から交付決定・実績報告・補助金交付という基本の流れは同様です。
よくある不採択・不備:公式に明記されている注意点
採択・不採択の個別理由は原則として開示されませんが、公募要領・公式ページには不採択や対象外につながる要因が明記されています。
公式に明記されている不採択・対象外の主な理由
- 公募要領に沿わない・不備がある:ものづくり補助金の公募要領概要版には「補助対象者・補助対象事業にあてはまらない等、公募要領に沿わない場合や申請に不備・不足がある場合は審査対象にならず、不採択となります。採択結果の理由開示及び異議申し立ては一切受け付けておりません」と明記されています
- 相見積もりの不備(一般型):交付申請の際、原則として発注先から2者以上・同一条件での見積もりが必要です
- 対象外経費の計上(カタログ注文型):委託・外注費、中古品、交付決定前に発生した費用等を補助対象経費に含めてしまうと、実績報告時に対象外と判断されます。治具設計やティーチングをSIerに外注する場合は、見積書の経費区分を事前に事務局へ確認してください
- ロボット区分の取り違え(カタログ注文型):「アーク溶接ロボット」カテゴリは協働ロボットが対象外と明記されています。協働型での導入を計画している場合は、対象となる別カテゴリの有無や一般型を先に確認する必要があります
- 「単なる置き換え」での申請(ものづくり補助金):新製品・新サービス開発を伴わない、既存工程の単純な置き換えは補助対象外と明記されています
いずれの制度でも、公募要領そのものを事前に通読し、自社の計画がどの要件に該当するかを整理したうえで申請することが、不備を避ける最も確実な方法です。
本記事は制度側とカタログの登録状況、種類の違いに絞って解説しました。溶接ロボットの導入をより具体的に検討する際は、以下の記事もあわせてご覧ください。
自社の状況に合わせた相談窓口をお探しの方は、無料相談窓口や補助金の公募スケジュール一覧もあわせてご確認ください。
出典・参考情報
最終更新日: 2026年9月16日。補助率・補助上限額・カタログ登録件数・公募スケジュールは変更される場合があります。必ず各公式サイトで最新情報をご確認ください。本記事は特定の採択・補助額を保証するものではありません。